探偵の寝言
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彼の寝言

たぶん。
彼のほうも、わたしに本当のことを言えないという罪悪感があったのか?
あまりに、わたしが彼に探偵や調査のことを聞きすぎていたのか?

いつも、
「秘密厳守だから。」
とか、
「調査については、絶対に話せない。」
の、一点張りだった彼が・・・・。

ある時から、調査内容らしきことを、寝言で話しだしたのだった。
あれって、不思議ですよね。

寝言をはっきり言う人って、話しかけると、まるで話しているように答える人もいますよね。
よく、寝言に話しかけちゃいけない、なんて聞いているのですが、知りたいことだから、やめられない。
なんで、寝言に話しかけちゃいけないんでしょうね?

一緒に夜を過ごしてから、間もなく。
最初は、日常的なことを寝言で話すだけだったんです。
朝、
「早く起きて〜。」
と、彼を起こすと、
「んん?これ食べてから。」
だった。

もう、大爆笑(笑)。
思わず、
「何食べたの?」
って聞くと、
「めざし・・・。」
なぜに、魚?
あまりの大笑いに、彼も目を覚ましてしまいました。

それからも、朝、起きぬけのときは、かなり寝言をはっきり言うようになったのです。
「今、ここ走ってるから。」
とか、
「待機中だから、邪魔しないで。」
みたいな?

ある日。
「今、調査中だ。」
って、答えたんですよね。
思わず、
「何の調査?」
と、素で答えてしまったわたしに、彼の返答は、
「彼女の尾行調査。」
ええっ?
「彼女、なにしてるの?」
と、聞くと、
「どうも、風俗に勤めてるんだよね?」

さらに驚くわたし。
いったい、彼はなんの調査をしているのだろうか?
わたしは、朝ごはんに食パンを焼いて、サラダを準備し、ベーコンエッグまで準備した。
入れたてのコーヒーを飲みながら、彼に、
「今って、風俗の調査、してるの?」
と聞いてみた。

コーヒーを吹き出しそうな勢いで、驚く彼。
「なんで・・・?」
わたしは、寝言で話してくれたよ、と、本当のことを話すべきかどうか、かなり迷っていた。
けれど、
「なんか、女の人の名前呼んでたから。あなたが浮気するなんて思えないし、風俗っぽい名前の女の人の名前だったから、そうなのかと・・・。」
と、ごまかしておいた。

あきらかにほっとした表情の彼。
浮気していないし、風俗の調査なんかじゃない、って言っていたけど、そのリアクションと、ほっとした表情から、きっと風俗の関係する、女性の調査だってことは、わかってしまったのだった。